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映画 邦画

『undo』(1994)

『undo』あらすじ

マンション住まいの一組の若い夫婦。
夫の仕事が多忙となり、妻は飼っている亀を散歩に連れていくことなどで退屈な一人の時間を埋めようと努力していた。
が、徐々に精神に異常を来していき、ある日編み物をしている最中、彼女は自らの手を縛っている自分に気づく。
やがて部屋の中のあらゆる物を縛り始め、ついには自分も縛ってほしいと夫に求める。

岩井俊二が『Love Letter』の前に発表する、「強迫性緊縛症候群」をめぐる夫婦の愛を描いた初の中編映画

監督・脚本は『リリィ・シュシュ』(2001)や『花とアリス』(2004)の岩井俊二。
出演は山口智子と豊川悦司。

個人的に処女作と思っていた『Love Letter』(1995)ですが、その前に作成された岩井俊二監督の中編映画です。
45分という尺の中で美しさと不気味さが際立つ無駄のない洗練された作品です。
後半の山口智子とトヨエツの緊縛劇が繰り広げられる舞台がアート作品のようで、淡い赤・ピンク色で人間の血肉のような恐怖を感じます。
そこで正気を失い虚ろで無表情な妻がひたすら口にする「もっと縛って」という言葉に乗せられてどこまでも深みにはまってしまう夫の痛々しい泥沼な展開が続きますが、その前に精神科のシーンで言い放った「縛っているより解けている」という言葉が引っかかり、見る側の解釈も夫と一緒に迷宮に引きずりこまれてしまいます。

岩井俊二の繊細さはそのままに、しかし一般的にイメージされる和やかさやかわいらしさを排除し芸術性に集中しています。
万人向けとは言えないかもしれませんが、「強迫性緊縛症候群」という一種の愛の障害から男女の関係性を見つめる美しい作品です。

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