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『そこのみにて光輝く』(2014)


『そこのみて光輝く』あらすじ

仕事を辞めて何もせずに生活していた達夫は、パチンコ屋で気が荒いもののフレンドリーな青年、拓児と出会う。
拓児の住むバラックには、寝たきりの父親、かいがいしく世話をする母親、そして姉の千夏がいた。
達夫と千夏は互いに思い合うようになり、ついに二人は結ばれる。
ところがある日、達夫は千夏の衝撃的な事実を知り……。

綾野剛・菅田将暉・池脇千鶴が、貧困の絶望の中、純粋な絆で結ばれていく人間ドラマを演じる

主演は綾野剛。
共演に池脇千鶴、菅田将暉、高橋和也、火野正平など。
監督は呉美保。
原作は佐藤泰志の同名小説。

ポスターやキャスティングから想像していた内容よりかなり生臭く、不快で、重苦しい、振り切れてる作品でした。
目を背けたくなる貧困の苦悩やそこで必死に生きる人々を取り巻く品の悪さを、決して飾ることなく私たちに叩きつけてきます。

この作品一番の見どころは、綾野剛と菅田将暉といういわゆるイケメン俳優がとことん汚く描かれているところです。
池脇千鶴は『ジョゼと虎と魚たち』(2003)から私の中でそういう役どころの耐性ができあがっているというのもおかしな話ですが、予想と違ったキャラクターとして出てきてもそれほど衝撃を受けることはありませんでした。それでもちゃんと(ちゃんと?)全てをかなぐり捨てなければ生きられないどん底の生活の中でもわずかに残された純粋な心がチラつく乙女、という繊細な演技でうならせます。
しかしやはり、それ以上に度肝を抜かれるのはとことんこだわり抜かれた貧困の描写。
宇多丸さんも言っていましたが、冒頭の達夫の登場シーンからそれは始まります。
画面から夏の蒸し暑さとヤニとゴミで散らかった部屋のにおい、汗ばんで絶妙に太った達夫の生々しい体臭(とても良いにおいとは思えない)までも感じ取れそうです。
そしてがさつで口が悪く、明るさと少しの思いやりが取り柄の拓児がニッと笑った時にむき出しになる茶ばんだ歯。
視覚、聴覚、そして嗅覚までも錯覚してしまいそうになるほど、画面のすみずみまで作りこまれた演出・演技によって彼らの生きる世界がどういうものなのか訴えかけてきますし、それによってぐっと世界に引き込まれます。

それぞれが抱える苦痛の中で絆を見つけ、ほんのわずかの希望に向かって手を取り合う男女の純粋さが、皮肉にも最低な環境との対比となって美しく浮彫になります。
お互いがお互いの心の救済となる、とても人間臭いヒューマンドラマでした。

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