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『帰ってきたヒトラー』(2015)

2018/11/22


『帰ってきたヒトラー』あらすじ

ナチス・ドイツを率いて世界を震撼させた独裁者アドルフ・ヒトラーが、現代によみがえる。
非常識なものまね芸人かコスプレ男だと人々に勘違いされる中、クビになった局への復帰をもくろむテレビマンにスカウトされてテレビに出演する。
何かに取りつかれたような気迫に満ちた演説を繰り出す彼を、視聴者はヒトラー芸人としてもてはやす。
戦争を体験した一人の老女が本物のヒトラーだと気付くが……。

現代に甦ったヒトラーが繰り広げる21世紀の洗脳と独裁の姿を描いたブラックコメディ

主演はオリバー・マスッチ。
共演にファビアン・ブッシュ、クリストフ・マリア・ヘルプスト、カーチャ・リーマン、フランツィシカ・ウルフ、ラルス・ルドルフ、トマス・ティーマ。
監督はデビッド・ベンド。
原作はティムール・ベルメシュの同名小説。

作品にも登場しますが、歴代のヒトラーを風刺してきた映画を並び立てて比較するように今までのヒトラー映画とは違った視点で彼を描いた作品であり、ただ彼の恐ろしさを作品にするだけにとどまらず、現代風にアレンジしなおして平和ボケした私たちに改めて警鐘を鳴らす衝撃的な作品でした。
最初は、あまりにも不謹慎な彼を徹底的に役にのめり込んだコメディアンだと思い込み、大衆が彼を受け入れていくところから始まります。
中にはもちろん反対するものや、今まではおおっぴらにできなかった彼を崇拝する団体などが声を上げ、賛否両論が繰り広げられます。

それは予想できる展開なのですが、この作品の怖いところは、ヒトラーのカリスマ性に焦点を当ててしまったこと。
人々の反感をかい一度は表舞台から去った彼が、話術とメディア戦略でのしあがっていきます。
ドイツの誇りを取り戻すため、と掲げて全身全霊の演説をする彼と巧妙なプロパガンダに視聴者がだんだんと圧倒されてしまい、そして最後に決して他人事ではない恐ろしい結末が待ち受けています。
時々ドキュメンタリー風な撮り方になるところもリアルで、「もしもヒトラーが現代にいたら」のシミュレーションとして完璧な映画でした。

誰でもあらゆる手段で情報を発信することができる今、カリスマ性と過激な思想を持ち合わせた独裁者が誕生するプロセスみたいなものを見ることができます。
「再び最高の国に」「美しい国に」と耳触りの良い言葉で誤魔化したり民衆を手懐けようとするリーダーが今もいることに絶望しますが、どうか彼らにはヒトラーほどの影響力がないこと、そして私たちがこの映画を見ることで目覚め、惑わされることなくしっかりとした思想と危機感を持つことを期待します。

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