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映画 邦画

『永い言い訳』(2016)


『永い言い訳』あらすじ

人気小説家の津村啓こと衣笠幸夫の妻で美容院を経営している夏子は、バスの事故によりこの世を去ってしまう。
しかし夫婦には愛情はなく、幸夫は悲しむことができない。
そんなある日、幸夫は夏子の親友で旅行中の事故で共に命を落としたゆきの夫・大宮陽一に会う。
その後幸夫は、大宮の家に通い、幼い子供たちの面倒を見ることになる。

西川美和の直木賞候補作を自身で監督・脚本した、本木雅弘主演の喪失と再生の物語

主演は本木雅弘。
共演に深津絵里、竹原ピストル、藤田健心、白鳥玉季、池松壮亮、黒木華など。
監督・脚本・原作は西川美和。

第153回直木賞候補作になった西川美和の同名小説を、自身で監督・脚本をつとめた作品です。
タイトルの通り、道徳に反していながらも変えがたい自分の気持ちに対して言い訳、または気持ちの落とし所を模索する一人の悲しい男の物語、と私は感じました。
彼がいかに妻を愛しておらず、そして今までの裏切り行為を悪びれも悔やむことない姑息な人間かということを表現するのにエゴサーチする姿をとらえたりと、身近な行動からじわじわとキャラクターを掘り下げていくことでしっかり丁寧に伝わってきます。
竹原ピストルを起用したことがまた絶妙で、良き夫のつもりで行ってきた主人公の善行に隠れる下心?をすべて見透かしているような鋭い眼光には、主人公と同じく見ているこちらもハラハラしてしまいます。
いつ彼の癇に触るか、いつ拳が飛んできてもおかしくない表情がトラウマ級に怖く、後ろめたさを抱える人間の心理をうまく突いています。

もっくんがことごとくクズな男として描かれる胸糞悪いスタートをきる物語なのですが、子供をあやす姿がこなれすぎていて、その変わり身の速さは敢えてなのか、その落差に少し違和感を抱きました。
主人公夫婦には子供がいなかったのでてっきり主人公が子供嫌いなのか(皮肉的な性格からして)と思っていましたが、よく考えると本当は逆だったのかもしれません。
私達が主人公へのシンパシーと憎めない一面を少しずつ感じはじめるポイントだったのかもしれません。どうなんでしょう。
それを抜きにしても本木さんがこどもと戯れたり、うろたえたりする姿はとてもかわいらしくそれだけで見る価値がありました。ちゃぷちゃぷローリー。

人間って不完全で弱いなぁと実感させられるとともに、それでも弱さを受け入れて生きていかなければならない。
その過酷な人生の一助になってくれそうな良き一例として心に沁みる作品でした。

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