CineMurMur

映画を中心に、音楽、漫画、アート、カルチャーについて、気になったことを綴っています

映画 邦画

『リリイ・シュシュのすべて』(2001)

lily

『リリイ・シュシュのすべて』あらすじ

田園の広がる地方都市に暮らす中学生の蓮見雄一は、同級生の星野修介からいじめを受けていた。恐喝・万引き・売春の強要など、星野のいじめは日に日に酷さを増していき、男女構わずターゲットにされた。そんなどん底のような日々の中で、蓮見にとって唯一のよりどころはリリイ・シュシュというアーティスト。蓮見は「リリフィリア」というファンサイトを作り、日本中のリリイファンと交流する。その中で特に気が合ったのが「青猫」というPNの人物だった。
日常の過酷さに耐え、「青猫」との交流も深まったある日、リリィのライブで実際に会う約束をした2人。当日、会場に向かった蓮見が見たものは…。

岩井俊二作品の導入となった作品

前回の『聲の形』に関連(?)して、そして夏の美しい田園風景(私の近所に広がっているのです)を見るとどうしても思い出してしまうのでピックアップしました。
岩井俊二監督作品と出会うきっかけとなった『リリィシュシュのすべて』。今はもう、気力・体力共に最後まで見きれる自信がありません。心にズドンと鉛を落とされた感覚になるからです。
リリィシュシュという宗教じみた人気とカリスマ性をもつアーティストに心酔し、発言も詩的になり、いわゆる中二病のような状態に陥る。
いつまでも続くかのように思える陳腐でどす黒い閉鎖的な日々からの解放を求めて音楽に没頭する。そんな時代ありませんでしたか?私はありました。今思えば黒歴史だったと笑える程度ですが、当時は大まじめだったのです、それが思春期というものです。
携帯・インターネットが普及しはじめた時代で、学生の間でHP作りやチャットの最盛期を迎えていた時代でもあったと思います。同胞を求めてネット上で会するPNたち。現実からの解放のはけ口がネットに移り変わるという時代の流れも読み取れます。
そして、幸か不幸か、オンラインで出会った自分の一番の理解者だと思っていた存在が、オフラインでは正反対の関係を築く2人とは誰が思うでしょう。最後、あの結末を選ぶ主人公に、誰も口出しはできないはずです。

映画.comの感想を見ると、低評価の意見には「見なければよかった」や「理解に苦しむ」という趣旨のものがあります。私が今初めてこの作品を見れば、同じような評価になるかもしれません。リリィシュシュから溢れる「エーテル」を感じ取れる繊細さを失ってしまったように思います。
なので、個人的にはなるべく若い段階で触れてほしい作品だと思っています。できれば10代。その時にしか味わえない感覚が確実にあります。
他にも『Love Letter』『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』『スワロウテイル』『花とアリス』など、比較的温和でハートフルかつ希望がある作品ばかりを見た私にとっては岩井俊二監督作品の中では珍しい憂鬱加減と認識しているので、そういう意味でも一見の価値ありです。
キャストに関しても意外や意外、陰鬱で大人しい蓮見を演じるのはこれが初主演となる市原隼人。熱血漢の代名詞とも言える彼がこんないじめられっこの暗い美少年を演じていたことがあるなんて幻級の作品だと思います。なんせ次の作品で早くもヤンキー映画に出演しちゃってますから、ますます貴重さが実感できます。他にも若い蒼井優、忍成修吾、伊藤歩、リリィ・シュシュとして出演・歌声を披露したSalyuにも注目です。
夏といえばホラーですが、ひぐらしの鳴き声で助長されるセンチメンタルさから言えば、鬱映画も夏映画と言えますね!

-映画, 邦画
-, , ,