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映画 邦画

『震える舌』(1980)

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『震える舌』あらすじ

少女が川で水遊びをしていると、指先に小さな切り傷ができてしまった。そんな普通の出来事に少女も両親も気に留めずにいたある日、彼女は口も利けず物も食べられなくなってしまう。
父親の厳しいしつけのため精神的なものだと診断され続けたが、とある大きな病院で看てもらったところ、破傷風というごく稀な病気にかかっていることが分かった。
光や音などの些細な刺激にも過剰に反応し、舌を噛み切る勢いで歯を食いしばり、背骨を骨折しかねないほど体をのけぞらせ叫び暴れる娘を前になすすべがない夫婦の苦悩と葛藤を描いたホラー作品。

形而上ではないリアルなホラー

昔は幽霊を恐れ暗闇を怖がっていた私ですが、最近は人間が一番怖いとつくづく実感しています。
この話もまさに実在する本当の病への恐怖をホラーとしてリアルに描き出した作品で、どんな不気味なゾンビやクリーチャーよりも恐ろしさを感じました。
今も存在する破傷風は、ほんの小さな傷からでも入り込み、感染すると最悪死に至る難病です。
現在はワクチンの接種が義務化されているようですが、30~40年以上前に生まれた方は接種していない場合があり注意が必要とのこと。

光や音の刺激でさえ激しい痙攣を引き起こす引き金になってしまうので、映画は終始真っ暗の個室で撮影されています。
そしてひとたび痙攣が起これば、口を血だらけの真っ赤に染めながら獣のように叫ぶ少女の痛々しい姿が。それが何度も繰り返され、少女の姿はボロボロになっていき、それに伴って疲弊していく渡瀬恒彦と十朱幸代が演じる若い夫婦がいたたまれません。
黒と赤のコントラストといい、けたたましい少女の叫び声といい、『パンズ・ラビリンス』(2006)と同様にトラウマ映画としてよく名前が挙げられる所以でしょう。
まさにリアルエクソシストです。

難病と対峙する

24時間つきっきりの看病に加え、ついに妻の精神が崩壊し理不尽な攻撃を受けながら、己の精神との対話という演出で苦悩の様子を描かれた夫。
苦しみながらも強い信念を持ち続けた彼の雄姿が忘れられません。
もうダメかもしれない、しかし希望を捨てたくない、病気と真正面に向き合わなければ、という姿勢が闘病の鑑です。
難病との闘いという現実の恐怖を、強烈な印象をもって植え付けられる作品でした。

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